実家の空き家問題、放置は絶対ダメ!相続前から考えるべき対策と活用法を専門家が徹底解説

「いつかは訪れるかもしれない、実家の相続。でも、実家が空き家になったらどうしよう…」

少子高齢化が進む日本において、空き家問題はますます深刻化しています。ご両親が大切に守ってきた実家も、いずれあなたが相続する日が来るかもしれません。その時、実家が空き家になっていたら、どうすれば良いのでしょうか?

実は、空き家対策は相続が発生してから考えるのでは遅いケースが少なくありません。問題が複雑化する前に、そして何よりご両親がお元気なうちに、家族で話し合い、準備を始めることが非常に大切です。

この記事では、空き家問題に詳しい行政書士(宅建士・(マンション)管理業務主任者合格者)の視点から、なぜ相続前から対策を考えるべきなのか、放置するリスク、そして具体的な対策や活用法について、専門的な知識を分かりやすく解説します。相続・不動産・税金といった法律が絡み合う空き家問題について、一緒に考えていきましょう。

なぜ実家の空き家対策は「相続前」から考えるべきなのか?

「まだ親も元気だし、相続なんて先の話…」そう思われるかもしれません。しかし、実家の将来について、特に空き家になる可能性がある場合、ご両親がお元気なうちに話し合いを始めることには、大きなメリットがあるのです。

相続が発生した後では、以下のような問題が起こりやすくなります。

  • 相続人間での意見の不一致: 誰が実家を相続するのか、売却するのか、活用するのか、相続人の間で意見がまとまらず、話が進まないケースは少なくありません。
  • 共有名義による問題の複雑化: 複数の相続人で実家を共有名義にすると、売却や大規模なリフォームなどを行う際に全員の同意が必要となり、手続きが煩雑になったり、意見がまとまらずに塩漬け状態になったりするリスクがあります。
  • 意思決定の遅れ: 相続手続き自体に時間がかかり、その間に空き家の老朽化が進んでしまうこともあります。

一方、ご両親がお元気なうちに話し合うことで、以下のようなメリットが期待できます。

  • ご両親の意向の確認: 実家を将来どうしたいのか、誰に相続させたいのか、ご両親の明確な意思を確認できます。
  • 生前贈与や遺言による対策: 話し合いの結果、生前贈与で実家を特定の相続人に譲ったり、遺言書で相続方法を指定したりすることで、相続発生後のトラブルを未然に防ぐことができます。
  • 柔軟な対策の検討: 時間的な余裕があるため、売却、賃貸、リフォーム、あるいは将来的な住み替えなど、様々な選択肢をじっくりと比較検討できます。

「まだ先のこと」と問題を先送りにせず、家族が集まる機会などに、実家の将来について少しずつ話し合ってみることをお勧めします。

放置された空き家が引き起こす深刻なリスク

「誰も住まない実家だけど、固定資産税さえ払っていれば問題ないでしょ?」そう軽く考えてはいけません。放置された空き家は、あなたが思っている以上に多くのリスクを抱えています。

1. 経済的リスク

  • 税負担の増加: 空き家を放置し、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすと判断されると、「特定空家等」に指定される可能性があります。特定空家等に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が最大で6倍になることがあります。さらに、都市計画税も同様に増額となる場合があります。
  • 管理費用の発生: たとえ誰も住んでいなくても、定期的な草刈りや小規模な修繕など、空き家の維持管理には費用がかかります。遠方に住んでいる場合は、管理を業者に委託する費用も考慮に入れる必要があります。
  • 資産価値の低下: 適切な管理がされず老朽化が進むと、建物の資産価値はどんどん下がっていきます。いざ売却しようと思っても、買い手が見つからなかったり、想定よりも低い価格でしか売れなかったりする可能性があります。

2. 物理的リスク

  • 倒壊・破損による近隣への被害: 老朽化した空き家は、台風や地震などの自然災害によって倒壊したり、屋根材や外壁が飛散したりして、近隣の住宅や通行人に被害を及ぼす危険性があります。
  • 不法侵入・放火のリスク: 人の気配がない空き家は、不法侵入や不法投棄、さらには放火のターゲットにされやすくなります。
  • 景観悪化・害虫発生: 庭木が伸び放題になったり、ゴミが散乱したりすると、地域の景観を損ねるだけでなく、害虫や害獣が発生し、近隣住民の生活環境を悪化させる原因にもなります。

3. 法律的リスク

  • 特定空家等への指定と行政代執行: 自治体からの改善勧告や命令に従わず、放置し続けると、最終的には行政代執行によって建物が解体され、その費用が所有者に請求されることがあります。
  • 管理不全による損害賠償責任: 空き家の管理を怠った結果、建物の一部が崩れて隣家を傷つけたり、通行人にケガをさせたりした場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。
  • 相続登記の義務化(2024年4月1日施行): 不動産を相続した場合、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。正当な理由なく怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。空き家のまま放置し、相続登記も行わないでいると、いざという時に手続きが複雑になったり、ペナルティが発生したりするリスクがあります。

これらのリスクを回避するためにも、空き家を放置せず、適切な管理や対策を講じることが重要です。

専門家が教える!実家の空き家対策 具体的な選択肢

では、実家が空き家にならないように、あるいは空き家になってしまった場合に、具体的にどのような対策が考えられるのでしょうか。ここでは、状況に応じた選択肢をいくつかご紹介します。

1. ご両親が居住中の対策

  • 将来の住まい方について家族会議を開く:
    • ご両親が高齢になった時、今の家に住み続けるのか、子ども世帯と同居するのか、高齢者向けの住居や施設に移るのかなど、将来の住まい方について具体的に話し合いましょう。
    • ご両親の希望だけでなく、介護が必要になった場合の体制や、経済的な負担についても考慮することが大切です。
  • リフォームやバリアフリー化の検討:
    • 今の家に長く住み続けることを希望される場合は、将来の生活を見据えて、手すりの設置や段差の解消といったバリアフリーリフォームを検討するのも良いでしょう。
    • 元気なうちから少しずつ住環境を整えておくことで、安心して長く暮らすことができます。
  • 遺言書の作成:
    • 実家を誰に相続させたいのか、あるいは売却してその代金をどのように分けたいのかなど、ご両親の意思を遺言書という形で明確に残しておくことは、相続トラブルを防ぐ上で非常に有効です。
    • 特に、相続人が複数いる場合や、特定の相続人に実家を継いでほしいと考えている場合には、専門家(行政書士、司法書士、弁護士など)に相談して、法的に有効な遺言書を作成することをお勧めします。
  • 家族信託の活用検討:
    • 認知症などでご両親の判断能力が低下した場合に備えて、実家の管理や処分を信頼できる家族に託す「家族信託(民事信託)」という制度も選択肢の一つです。
    • ご両親が元気なうちに契約を結んでおくことで、将来的に判断能力が低下しても、信託契約の内容に従って受託者である家族が柔軟に財産管理を行うことができます。成年後見制度よりも柔軟な財産管理が可能になる場合があります。

2. 空き家になった後の対策

  • 売却:
    • メリット: 固定資産税や管理費用の負担がなくなる、まとまった現金が得られる。
    • デメリット: 思い入れのある実家を手放すことになる、希望価格で売れるとは限らない。
    • 注意点: 信頼できる不動産業者を選ぶことが重要です。複数の業者に査定を依頼し、売却戦略や手数料などを比較検討しましょう。また、売却によって利益が出た場合には譲渡所得税がかかることがあります。
  • 賃貸:
    • メリット: 家賃収入が得られる、実家を手放さずに済む。
    • デメリット: 入居者が見つからないリスクがある、リフォーム費用や管理委託費用がかかる、固定資産税などの維持費は引き続き発生する。
    • 注意点: 賃貸に出す場合は、ターゲットとする入居者層(ファミリー向け、単身者向けなど)を明確にし、必要に応じてリフォームを行う必要があります。また、家賃滞納や入居者トラブルのリスクも考慮し、管理会社に委託することも検討しましょう。
  • 解体:
    • メリット: 建物の管理負担や倒壊リスクがなくなる、土地として売却しやすくなる場合がある。
    • デメリット: 解体費用がかかる、解体後は住宅用地特例が適用されなくなり固定資産税が高くなる可能性がある。
    • 注意点: 解体費用は建物の構造や規模、立地条件によって大きく異なります。複数の解体業者から見積もりを取り、比較検討することが大切です。また、解体後の土地の活用方法(売却、駐車場経営など)も併せて検討しておきましょう。
  • その他活用法:
    • 地域貢献: コミュニティスペースや子育て支援施設、移住者向けの体験住宅など、地域に貢献する形で活用する方法もあります。自治体によっては、こうした活用法に対して補助金が出る場合もあります。
    • 空き家バンクの利用: 自治体が運営する「空き家バンク」に登録し、買いたい人や借りたい人とのマッチングを期待する方法もあります。

どの対策が最適かは、実家の状況、ご家族の意向、経済状況などによって異なります。それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、専門家にも相談しながら、慎重に検討することが大切です。

空き家対策で活用できる制度や専門家

空き家対策を進めるにあたっては、様々な制度を活用したり、専門家のサポートを受けたりすることが有効です。

  • 自治体の補助金制度:
    • 多くの自治体では、空き家の解体費用やリフォーム費用、耐震改修費用などに対する補助金制度を設けています。お住まいの自治体や実家のある自治体のホームページなどで確認してみましょう。
  • 専門家への相談:
    • 行政書士: 遺言書の作成支援、相続手続き、家族信託に関する相談、空き家活用に関する許認可申請(民泊など)のサポートなど、幅広く対応できます。
    • 司法書士: 相続登記、不動産売買に伴う登記手続き、成年後見制度に関する相談など。
    • 税理士: 相続税や贈与税、不動産売却に伴う譲渡所得税など、税金に関する相談。
    • 不動産業者: 不動産の査定、売却、賃貸の仲介など。
    • 建築士・工務店: リフォームや解体に関する相談、見積もり。
    • マンション管理士: (主にマンションの場合)管理組合の運営や大規模修繕に関する相談。

私たち「東京都 多摩 相続・遺言 相談所(小平一橋大学前 行政書士事務所)」でも、相続手続きや遺言書作成のサポートはもちろん、空き家問題に関するご相談も承っております。お客様の状況を丁寧にお伺いし、最適な解決策をご提案させていただきます。不動産会社や税理士、司法書士など、他の専門家とも連携し、ワンストップでサポートできる体制を整えています。

まとめ

実家の空き家問題は、決して他人事ではありません。放置すればするほど問題は深刻化し、経済的にも精神的にも大きな負担となり得ます。

大切なのは、問題が表面化する前に、ご家族でしっかりと話し合い、早めに対策を検討し始めることです。そして、ご自身たちだけで抱え込まず、必要に応じて専門家の知識や経験を活用してください。

この記事が、皆さまの実家の将来を考えるきっかけとなり、より良い解決策を見つけるための一助となれば幸いです。どんな些細なことでも構いませんので、空き家問題でお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。